STORY
2021年10月、黒部ダムの玄関口・扇沢(長野県大町市)に、かつての建設作業員、ちくわ職人、調理人、登山ガイドらが集まった。何の接点もなさそうな5人だが、実は本人たちも意識しないところで長い間共有していることがあった。
黒部ダムとビタミンちくわに関する「歴史」「人」「食文化」をキーワードに、つながりが生まれて70年近く経った今、5人は奇跡のような巡り合わせの下で初対面を果たした。思い出を語り、共に「ビタミンちくわカレー」を味わった5人。それぞれの胸に、どのような思いが去来したのか。
「仕事に惚れた」
ゴムの合羽を着て雨風吹きさらしの中、重機に乗りました。型枠にコンクリートを流し込む量は、当時の世界記録でした。作業員は三交代で、建設作業は24時間ぶっ通し。戦場のような所で、宿舎に帰れないこともありました。誰に指示されたわけでもありませんが、仕事に惚れて、完成まで何とか頑張ろうと一般的に考えられないような情熱があったんだと思います。